それは、悲惨なまでの注文だった。
道路がない。
資金がない。
借金がある。
数年前にローンで購入した不動産を売却しなければ、いわゆるダブルローン。
隣地にある遊休地を、工事期間中借地することが可能ということが、唯一救い。
施工に支障はない。
敷地を見た。
既存住宅と周囲を、観察する。
暫く、その場に佇む。
身体から時間軸が、溶融する。
まだ、景色として存在しているはずのない家が、
現実としてそこにあるはずの時空を透過し、
そのシルエットを、わたくしにアピールしている。
面白い家が、描ける。
家が、
事情を移動させ、
自らの生命力で、生まれ替わろうとしている。
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