持ち帰ったその花を、母に自慢すると、母は、
「これは、別れの印だよ。」「今日で最後にしましょうということだよ。」まじめにそう云った。
別々の学校に通う、高校生だった。
純情で、自分自身を過信することもなかった。
薄紫の、可憐な花。
清楚で、静かなその花は、同級生のその人そのままに、美しい。
長い時間直視していると、悲しささえ漂う美しさ。
母の言葉が、渦を巻く。
植物公園での、初めてのデート。
帰る間際に、お小遣いで買ってくれた一鉢の桔梗。
多くの時が、ぼくを押し流し、
桔梗の花が、記憶としての形を宿し始めたころ、
ぼくは偶然、花言葉の本を、手に取った。
桔梗…、ページを繰る。
桔梗の、花言葉…
桔梗の花の、花言葉は…。
「変わらぬ、愛」だった。
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