2019年8月8日木曜日

大型トレーラーのモンローウォーク




 窓から見下ろす風景に、不思議な交差点がある。
それは何とも奇妙で、珍しい交差点。
僕も、ここに来るまで見たことがなかったし、他にこの様な交差点を知らない。

僕は、三か月程前にここへ越してきた。
引っ越しするまで、散々様々な物件を見てきたし不動産屋にも色々世話になった。
だがここは、パソコンの衛星写真を見ていて自分で見つけたのだ。
 面白そうな場所に、面白そうなビルが建っていた。しかし、僕の対応をしていた不動産屋は、この様な手頃な賃貸物件を知らなかった。
 面白そうな建物とは、それは建築士の勘としか言いようがなかった。道路から見て奥に細長いこの小さな建物は、その右辺が若干バチッていた。更に、建物の奥には別の道路がちょうどこの建物の幅で突き当たっていた。あれっと思って、若しくはピンときて、色々検索したら、一部屋だけ入居者を募集していた。ネットワークで繋がっているはずの不動産屋は、意外と当てにならないものだ。

赤信号で右折可能を示す青矢印が点くと、普通ドライバーは右に大きくハンドルを切る。しかし、この交差点は違った。右にハンドルを切った直後にすかさず左に大きくハンドルを切らなければならない。右折する時は右ウインカーを、左折する時は左ウインカーを出すのが常なのだけど、この交差点は違った。右ウインカーだけで、右に曲がり直後に左折するのだ。
僕は、不思議だった。ここを通るドライバーは横着物が多いのだなと暫く観察していたが、右折した後左ウインカーを出したのは、今まで一人しかいなく、しかもそのクルマは普通車でこの交差点に不慣れか初めて通るドライバーだったらしかった。
それは、大型トレーラーといったプロ中のプロ全員が、右ウインカーだけでこの交差点をやり過ごしていることで分かった。
何故か。分かる人がいるだろうか。その人はきっと近所に住んでいるか、ここをよく通る大型トレーラーの運転手さんだろうな。
 それはね、なんと右折するその道はそのまま進むことが出来ない様に、交差点内で左に大きくカーブしている道だったのだ。驚きというか衝撃的というか。その事実を知った時、僕は腰が抜けるかと思った程だ。()

寝そびれた深夜などに、僕は廊下に立って、その交差点が一番よく見える窓台に立ち飲みバーのカウンター宜しく水割りウイスキーを入れたグラスを置いて、窓を開け煙草を吹かしながら何十分も、荷台を牽引して走る大型トレーラーのセクシーな腰振り走行を眺めているのである。




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