2014年2月1日土曜日

「お受験」顛末記

受験、受験と騒がしかった我が家に、
久しぶりに、普通が帰ってきた。

何十年も前、
わたくしは、公立高校を受験した。
その頃は、ネットなんて無くて、
受験校の掲示板を見るしか、受かったか否かの情報を知る術がなかった。

まだその頃は、父親が生きていて、
父親は、秘かに、その掲示板を、見に行った。

一方わたくしは、当然あるべき番号を即座に見つけて帰宅した。

間を置かず、そこへ父親が帰ってきて、
されたことのないことを始めた。
父親は、わたくしを慰めようとしている。
番号が無かったと…。
びっくりしたことを、今でも鮮明に覚えている。

さて、あの時、父親はどんな気分だったのだろうか。
知りたいなと思っていた。その時、父親はどんな心境になるのか。
受かっていたとしても、そうでないにしても。

家人と当人は、スマホを覗き込んでその時刻を待っていた。
第一志望校の合格発表、受験から二日後の4時。

わたくしは、そうは言っても迷っていた。
目の前には、パソコンが有り、受験校のHPが立っている。
このまま、あと2時間ほど待っていれば分かること。

しかし、急にどうしても体験したくなった。その父親の気分を。

もし息子が合格していたら登校に使うはずの交通手段を、経験してみた。
所要時間46分。電車の乗り換え1回。まずまずだな。

予定発表時間まで、あと15分。
予定は予定なので、適当に張り出しているかもしれない。
掲示板の前まで行ってみた。まだ無い。
どうやら、時間は正確らしいことを察知した。

遠巻きに親子が、掲示板を囲んでいる。

外のタバコ屋の前まで行き、一服つけてくればちょうどいいだろう。

再び、掲示板の前、まだ5分ある。
隣に、一組の親子が立った。
隣で、カウントダウンが始まった。あと3分、2分。

二人の学校職員が、大きなボードを裏返しにして持ってきた。
4時ジャスト、ボードを表側にして掲示板に張り出した。

その瞬間、番号が見えた。
父親の心境は、一部味わえず仕舞い。
すぐに、見つけてしまった。
携帯で、写真を3枚ばかり撮り、掲示板を背に外へ向き静かに歩き出した。

受験前、「受かる気がする。」
試験後、「あの学校に通うと思う。」等と、根拠のない自信を持っていた息子。

校内の広場を半分も歩かないうちに、家人から電話。
息子と共に喜びを爆発させている。

知っているよ。見たからね、掲示板を。

ビールが飲める最も近い店に入って、グラスにいつものように、手を合わせた。

「ずるいよ、父さん。」
3回程グラスを替えてもらったとき、手続き書類を持った家人と息子が入ってきた。



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